Ouaf

 
 


 〜 さくら日記 〜


手術の日も決まった夜。

夕方からよく寝ていたさくらは、晩ご飯もあまり食べませんでした。
「移動で疲れたのかな」などと考えつつ、大好きだったササミとお薬
を与えてなんとか服用はできました。


けれども夜中、3時半ごろ。
さくらは保護された当時よりもひどい状態で唸り、鳴き始めました。
ベッドをトントン叩いてあげても戻らず、背中を撫でても苦しそうで
す。ただ喉が渇いていたのか、鳴いたときに食器を口元へ持っていく
と、一生懸命お水を飲んでいました。

その後もサークルの中を落ち着かずに這い回るのですが、なぜか前足に
も力が入らず、足の甲側を床についてしまったり、身体ごとゴロンと転
がってしまったり…思うように動かない身体に、パニックを起こしてい
るようにも見えました。


鎮痛剤を勝手に追加するわけにもいかず、とにかくさくらを抱いて落ち
着かせ…朝方、なんとか眠ることが出来ました。
混乱するさくらを相手に慌てるばかりで何も出来ず、ただ抱いて撫でて
いただけでしたが、なんとなく体温が低いような気がして毛布を多めに
かけてあげました。


翌朝。

さくらはぐったりして水も飲もうとしません。
も開こうとしないので口の中に指を入れてみると、思った以上に冷た
く、歯茎も白くなっていました。


病院が開くのを待って電話で相談しましたが、結局見ていただこうとい
うことになり、再度受診。その日は、最初にさくらを見ていただいたY
先生が担当してくださいました。



体温35℃。
先週25%だった血液濃度が、今日は10%。
衝撃的な値でした。

身体の中のどこかがまた破壊され、貧血がひどくなったためにさくらは身
体を動かすのも辛くなり、何をしても怠くて身のやり場がないのだろうと
いうのが所見でした。

昨夜立てなくなったのも、人間が貧血で倒れるのと同じように、フラフラ
して立っていられなかったのではないか…と。

カリウム等の値も高く、このままでは心臓を止めてしまうかもしれないと
のこと。先生は「手術をすることにどこまで拘るか」を聞いてください

したが、私達が望んでいるのはただ「痛くない、苦しくない」ことだと伝
えると、新たな処置を提案してくれました。

 


ひとまず点滴でミネラルの値を正常に近づけ、痛み止めの
パッチで痛み
感じさせないようにする。


鎮痛剤の注射よりも持続性があり、全身の痛みに効果があるというもので
す。それを3〜4日おきに張替えながら点滴をしていこうということでし
た。どんなに輸血をしても、薬を使っても、血液を造る力のないさくらに
は「その場しのぎ」でしかないのです。

それなら、苦しい思いをさせるより少しでも楽に生きてほしい。

この日「このままでは、もって2〜3日」と言われたさくらだから、この
点滴も何回受けに来られるか分からない…そう思いながら、今後の計画を
立てました。

  

帰り道。パッチを張ってもらったさくらは静かに寝ていました。
病院に着くまでは「死ぬなー、さくらー。生きてるー?頑張れー」と声をかけ
ながら、心臓をドキドキさせて走った道。
寝息の聞こえる車内は、嘘みたいに穏やかでした。


家についてからも、さくらは首を起こしてキョロキョロしたり、トイレに少し
動いたり…ゆっくりだけど静かな時間を過ごしていました。痛みのない自分の
身体に少々驚いていたのかもしれません。


そして、みんなの傍で静かに眠っていた21時16分。
さくらが突然「キャーンッ!」と鳴きました。
事態を察してさくらのベッドに駆け寄り抱き上げましたが、1分と苦しまず、さ
くらは天国へ旅立ちました。


最期に痛みと不安を取り除いてくださった先生に、心から感謝です。
保護してからの時間が本当に短すぎて、何もしてあげられなかったけれど、これ
からはずっとウチの子として、傍にいたいと思います。

これできっと、さくらもまた元気に走り回れるはずだから…
さくら。みんなと一緒に、虹の橋で待っててね。