Ouaf

 
 



 〜さくら日記〜



               

待ちに待った再診の日。
さくらも機嫌が良く、長い道のりも鳴かずにたどり着きました。


診察室に入る私達にかけられた第一声は

「なんか…大変なことになってるね」

状態は決して良くありませんでした。

前回の検査結果で明らかだったのは、やはり貧血がひどいこと。
このまま手術を行うなら、輸血が必要になるかもしれません。

そして背骨の崩れ。
これは脇や乳腺にある腫瘍の転移、もしくは感染症が疑われると
のことでした。この原因も手術を行えば明らかになる筈。


先生は外的要因からなる損傷なら、どうにでもなると言います。
衝撃で壊れたものは治せるのです。


けれども中から沸いてくる病気が相手となると話は別で、どんな
に修復してもどんどん内側から壊されてしまって追いつけなくな
ると
仰っていました。


その為か、さくらの手術に関しても決して無理に勧めることはあ
りませんでした。

「もしかしたら手術を待たずに亡くなることがあるかもしれない」
「手術をしても歩けるようになるかどうかは分からない」
「手術後、回復する前に命が尽きることも考えられる」

「助けたい気持ちは分かるけれども、綺麗事ばかりじゃやれない
でしょう?今回は手術の費用だって安くはない。それをしても無
駄になる可能性だってあるよ?」

考え得るリスクはすべて教えてくださいました。


それでも「やろう」と決めたのは、
「もし歩けるようにならなくても、痛みは取れる」その一点でした。


勿論、もう一度歩くことが出来るようになるのが第一の希望です。
でも、もしそれが叶わなくとも
「痛みがない」
これは病気のものにとって、とても重要なことだと思うのです。


その思いを伝えたとき、先生はにっこりして
「じゃあ…頑張るか?」
と、さくらの頭を撫ででくれました。


「…となると、もう待つ意味はないよね」
貧血の具合を見ても、さくらの手術は先延ばしにできません。

「じゃあ木曜日、閉院後の夜にしましょう」
手術は4日後。それまでは、抗生剤と鎮痛剤で凌ぐことになりました。


入院の手順等を確認して香川に帰る途中、さくらはとても機嫌が良くて

サンドイッチのパンやハムをねだったり、ソフトクリームを美味しそう
に食べたり…窓の外の景色をじっと眺めたりもしていました。

車の窓を開けると大喜びで、気持ちよさそうに風を浴びて鼻をクンクン鳴
らしてていました


その時が、さくらの1番の笑顔だったんじゃないかな…
さくらを保護して以降、私達にとっても1番笑えていた1日だったように思います。



                                          

    
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