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   〜 さくら日記 〜 

          
    
さくらを初めて抱き上げたとき、左脇の大きな塊が3つ手に触れました。
脇に腫瘍があるということは聞いていましたが、こんなに大きなものとは
警察では口にしませんでしたが、正直驚きました。

 
帰宅後も、さくらの鳴き声が止むことはありませんでした。
「ぅ〜〜〜〜…ぅ〜〜〜〜〜…」と鳴き続けるさくらの身体をチェックし
てみると、お腹まわりにも無数の突起がボコボコ…。傍にいたメンバー全
員、言葉を失いました。 この子の身体は私達の予想を遥かに超えた、と
んでもない病魔に蝕まれていたのです。
 

 

その夜、さくらが静かにしていられるのは、傍で身体を撫でているときだ
けでした。寂しさと身体の痛みが、人の手の温もりでなら少しは和らいで
いたのでしょうか。
ほんの少しでも安らげていたなら…そう思えるくらい
さくらはとにかく「癒してあげたい子」でした。
 

 

1日目は自力で排尿できるか等の確認をし、2日目にいつもお世話になって
いるKどうぶつ病院へ、さくらを連れて行きました。

 

レントゲン検査の結果、下から3番目の背骨がだいぶ崩れているのが分か
りました。後ろ足が使えないのは怪我ではなく、背骨に起きた異変のせい
…この原因を明らかにするためには、CT検査が必要とのこと。
その日は抗生剤と安定剤を処方していただき、帰路につきました。

 


その夜、薬のおかげでさくらはぐっすり眠りました。

ほんの小さな一片で泥のように眠るさくらの姿は、これまでの疲れを物語
っているようで、哀れとも言えるほどでした


元飼い主さんは自分の医療費も削ってさくらと暮らしていたといいます。

ただ、生活も行き詰まってきた今、さくらを病院に連れて行くことは出来
なくなったと話していました。

この腫瘍を見つけたのがいつなのか、足が不自由になってしまったのがい
つからなのか…聞きたいことが聞けず、もどかしい想いのまま、時間は刻
々と過ぎていきました。
 

 
…というのも、その日は警察から連絡があったのですが、とにかく一方的
な内容でまったく話が噛み合わないまま終わってしまったのです。


その日はWさんという婦警さんからの電話でした。

「(元飼い主)さんの事件は既にご存知ですね。実は、事件を起こした当
日、犬が発作を起こしたというんです。その事をどうしても伝えておいて
欲しいと言われたのですが、犬は大丈夫ですか?」


「今のところ変わりありません。発作というのがどんなものか、頻度とか
…何か聞かれてますか?」

「初めて痙攣を起こしたそうです」

「分かりました。実は、私もちょうどお電話しようと思っていたんです。
どうしても(元飼い主)さんに聞いておかなくてはならない事があるんで
す。下半身が不自由な状態なのですが、それがいつ始まったのか、腫瘍は
いつ頃発見したのか、これを聞いてもらえますか?」

 
「実は、私がお電話したのも、捜査上、犬の状態を聞く必要がありまして。
犬は現在、どんな状態ですか?かなり悪いんですか?病院には行かれたん
ですか?」

 

「ガリガリに痩せているとか、一目で分かる状態の悪さはありませんが、下
半身がまったく動きません。病院には今行っていますが、今後の治療の上で
どうしても今までの状況を知りたいんです。」

 

「そうですか。ガリガリに痩せてはいないんですね。念のため、病院をお聞
かせいただけますか?」

 

「病院に問い合わせるんですか?」

 
「病院には連絡を入れて欲しくないという意向でしたら、連絡は入れません。
調書の確認上だけのことですので、念のため病院名をお聞かせください。」

 

私「Kどうぶつ病院です。しかし状態が状態ですので、それに合わせて病院は
変えると思います。で、今までの状況は聞いてもらえるんですか?」

 

「外部のものとのやり取りを私が仲介すると、それは、便宜供与になってしま
うんです。本日、勾留申請を出しましたので、それが認められれば接見できま
す。ただし、接見禁止というのがつけば無理ですが」

 

捜査上必要なことには、答えなければならないと思っていました。
けれども、警察が連絡をしてきて引き取った犬の状況を聞くのが
「便宜供与」
ですか?友達と連絡を取り合っているのとは訳が違います。
しかも、面識のない私達に接見を勧めるとは…写真を公開しているわけでもな
い拘留中の人間を、会ったこともない外部の人間に会わせるのですか?泣く泣
く手放した犬の話をするということは、本人の精神状態にもマイナスでしょう。


その後、また警察から電話がありました。昼間の婦警さんです。

「昼間、聞き忘れたのですが。こちらで最初に写真を撮っておけばよかったの
ですが、犬の写真が必要になったとき、撮りに行く事は可能でしょうか?」

 
「今後ボランティアさんの手を借りるかもしれませんし、入院するかもしれま
せん。写真が必要ならば、撮ってメールで送りましょうか?」

 

「メールではダメなんです。絶対に写真が必要というわけではないので、もし
必要となった場合には、居場所を教えていただけますか?」

 
「それはお教えできるかどうか、お答えできません」

 

「そうですね。絶対必要というわけではないので、必要になったときに、また
お電話差し上げます。」



あまりに勝手すぎて、これ以上協力などする気にはなれませんでした。